2004年7月号 建築知識

建築知識―業務③

専門工事業者に学ぶ

水廻りのコストざっくり概算術

ライフデザイン代表 小林 稔

ここでは概算見積りに際しての基礎知識を、特に施主ニーズの高い水廻りを例に解説する。


概算見積りのポイント ①キッチン

見積に際しては工事内容を知る必要がある。

すべてのリフォーム工事に共通なのは撤去解体工事である。


*見積り上は関係ないが、新しい住宅設備機器に配管・配線が接続されるまで閉栓・止水・絶縁状態に置かれるので、撤去解体時に漏水・漏電事故防止のために確実な閉栓処理が必要

建築知識 2004.07号

キッチンは住まいのなかでも一番多くの工手が絡み合った複雑で難しいリフォームになり、表①の工事が発生する。

次に解体材や資材をみる。

キッチンの交換工事では、産業廃棄物として既存のベースキャビネット、吊戸棚やレンジフードなどの解体材が発生する

また、壁にキッチンパネルを貼る場合には既存のタイルなどを剥がす必要が生ずる。



ウォールキャビネットの取り付け下地作業には、既存のホールインアンカーに胴縁を取り付けて構造用合板を張る。

システムキッチンの部材は、シンク一体型ワークトップ、扉、水栓金具、ビルトインガスレンジ、ベースキャビネット、ウォールキャビネット、シロッコファン、流しの手元照明器具などがある。




次に作業内容と所要時間をみる。

まず養生である。

マンションの場合、必ず共用部と現場内の搬出入の養生を行う。

エレベーター内部はもちろん、共用廊下すべてにシート養生を行う場合もある。

この作業に一人・一時間要する。



既存キッチンの撤去時には、あらかじめ配管類の切断、閉栓処理をガス・水道・電気の専門工が行う。

既存機器類の撤去作業は二人・二時間程度で完了する。



撤去材をコンパクトに解体し搬出する。

初日に新規キッチンの配管接続位置まで先行配管しておく。

その後、ウォールキャビネット部の下地補強や流し前パネル張り用の下地組などの木工工事を行う。

これには、一人・三時間程度要する。












新規キッチン資材の荷揚げ搬入も着工日に完了しておくと翌日の作業がスムーズだ。

翌日、流し前パネル張りに続いてキッチンの組立を行う。

この作業は二人・五時間程度である。



給排水・給湯配管の接続、電気配線の接続、排気ダクト接続工事も同時に行う。

これらは各一人・一時間程度で終了する。



キッチンとの取合いにシーリングを充填し、ガス配管の接続後、給水・給湯の水張り、排水及び換気扇とガスレンジの作動燃焼試験を行う。




配管類や機器類に不具合がなく、シーリング材が指触乾燥すれば完了となる。


概算見積のポイント ②トイレ・洗面

トイレ・洗面化粧台のリフォームは、短時間で完了させなければならず、時間の制約が大きい。

トイレ洗面の場合、発生する工事は表③のようになる。

次に解体材や資材を見る。

トイレ・洗面台の交換工事では、既存の便器・ロータンク・ベースキャビネット、洗面ボウル・ウォールキャビネットなどが産業廃棄物となる。

また、和風床上げ式便器を撤去する場合、支えブロックや充填モルタルなどの解体材が発生する。

古い物件の場合には、既存汚水管と便器の接合部分が劣化しているため、ほとんどの場合新たなフランジ部材が必要となる。


次に工事内容と所要時間をみる。

まずキッチン同様に養生を行う。

既存便器の撤去時には、あらかじめ配管類の切断・閉栓処理を行い、止水後にロータンクと大便器内の水抜きを行って撤去する。


既存洗面台の撤去についても同様の止水処理後にキャビネットを撤去する。

撤去作業時間は各30分程度である。


なお床下再配管のために大引、根太を切断する場合には必ず補強工事を行う。

機器撤去および床下地組補修が完了後、既存内装仕上げ材を撤去する。

それぞれ一人・二時間程度かかる。



次に仕上げ工事となる。

まず下地調整を行い、壁にはビニルクロス、幅木材はソフト幅木、床材は長尺ビニルシートの貼り替えを行う。

それぞれ一人・一時間程度かかる。



仕上げ工事完了後に、設備機器の取り付けおよび給排水・給湯配管の接続、電気配線の接続工事を行う。

各一人・二時間程度要する。



機器の取合いにシーリングを充填し、各配管類の接続確認のため給水・給湯の水張り試験と排水確認を行う。不具合が無く、シーリングが指触乾燥すれば完了となる。上記にもとずく、標準的な便器・洗面台更新の概算は表④となる。






概算見積りのポイント③風呂・脱衣所

風呂・脱衣所で発生する工事は表⑤のとおりである。

マンションの場合、浴室リフォームのほとんどがユニットバスの交換工事となる。



既存のUB解体に際してはディスクサンダーでパネルをカットする。

想像以上に粉じんが発生するので、シート養生の目張りを十分に行い、脱衣室側への流入を防止する。最近の傾向として、浴室暖房乾燥機の新設や給湯器交換に伴い表⑤の作業が発生する場合もある。





次に解体材や資材をみる。

撤去されたユニットバスは浴槽以外は板状のパネルなので、小さな体積で廃棄できる。

新規のUBは、四方のパネル材や天井パネル、浴槽および床板ユニット、出入口ドア部材、水栓部品、シャワー部材、排水ユニットなどとなる。


それらの梱包資材が大量に発生するので、撤去処分費用とは別に処分費用が必要となる。

次に作業と所用時間をみる。

既存ユニットバスの撤去時には、あらかじめ配管類の切断、閉栓処理をガス・水道・電気の専門工が行う。

既存機器類の撤去作業は二人・二時間程度で完了する。


新規ユニットバスの配管接続位置までの先行配管作業も同時に完了させる。

この作業は二人で三時間程度である。


床板ユニットのレベル調整と据え付け、脚アジャスターボルトの固定までを着工日に完了しておくことで翌日の作業が手際よく進む。

翌日、四方の壁パネル張りに続いて天井パネル組立てを行う。

二人で二時間程度である。



給排水・給湯配管の接続、電気配線の接続、排気ダクト接続工事も同時に行う。

この作業は二人で三時間程度だ。


最後に入隅の防水処理を行い、給水・給湯の水張り、排水および換気扇と作動試験を行う。

脱衣室側ではドア枠の下地補強と額縁の取付け、解体部の下地補修を行い、内装下地工事を行う。

この作業は二人・三時間程度である。



上記にもとづく標準的なユニットバス交換工事の概算は表⑥のようになる。

リフォーム超基礎知識編 業務④

これで万全見積りの書式と表記方法

小林 稔(ライフデザイン)

ここでは概算見積りに際しての基礎知識を、特に施主ニーズの高い水廻りを例に解説する。


どんな書式がいいか

(1)コストがつかみやすいこと

見積り書式は、施主にとって必要な情報がすべて明記されているものが望ましい。

「必要な情報」とは、工事の種類(工種)、工事の範囲(居室別)、工事の部位(床・壁・天井など)、仕様、施工数量、単価、金額、資材の寸法、資材の名称とメーカー名、品番、定価などとなる。

これらのリストを内約明細として列挙すると詳細だが見づらい。

かといって工種だけを大項目に集計した帳票では、専門的で大雑把な定型帳票となってしまう。

表1のように、工種ごと部屋別の一覧表があれば、添付の内約明細書と併用することで施主にも費用配分やコスト構造がつかみやすいかたちとなる。

(2)変更・追加が見えやすいこと

リフォームには変更・追加が付きものだ。

ここで、施主に理解してもらう必要があるのは、変更と追加の違いだ。

変更とは、既に計上されている内約明細の仕様(素材の材質・グレート・品番)や施工範囲(数量)が変わることだ。



仕様変更の表現方法にはいくつかあるが、変更された項目を明確にするためにも、あえて変更前に計上した項目は削除せず、数量あるいは単価をマイナス訂正したうえで新たに変更された項目を表示することで要素が見えやすくなる。

追加とは、当初計上されていなかった項目が新たに発生した場合、その都度計上される項目をいう。

見積段階で発生したものは順次付け足し、内約明細にまとめられるが、着工後に発生したものについては、工事の進捗を優先するあまり、あいまいな対応になりがちだ。


筆者は、当初の契約工事を「本工事」とし、別な工事区分として「追加工事1」「追加工事2」のように明確な工事単位で別途契約書を取り交わしている。

施主、施工者のどちらにも煩雑な作業となるが、リフォーム工事特有のトラブルを回避するには欠かせない手続きだ。

書式作成のポイント

(1)項目の設け方

中古マンションリフォームの工事価格は「共通仮設費」と「直接工事費」に二分できる。

このなかで、直接工事費の項目を詳細に分類することで、施主にも分かりやすい見積り書式となる。

そのため直接工事費は、資材費・作業費(工費)・工事費(材工共)に分類し、それぞれを居室ごとの項目で表示する(表2)。



また、共通仮設費については、専門用語を使わず、施主が理解できるように具体的な作業内容を摘要欄に記載する。





(2)数量・単位の設定

建築工事の資材関係の単位表現としては、m、㎡、立米、ケース、セット、台、枚、本、缶、袋、束、などがある。

リフォーム用の見積り書式では、資材関係の内訳明細の記載として数量と単位表現だけでなく、形状寸法や荷姿、メーカー名と品番などの表示を併記する。

この補足情報によって資材の発注ミスや数量の算出ミスを防止することに役立つ。



作業費関係の単位表現としては、メートル・平米・立米・ 個所・人工・日などがある。

時間単位で施工するリフォームの場合、人工表現などが難しいケースがある。

その場合もたとえば半日で完了する作業であれば、”0.5”人工といったかたちで表示する。

こうすることで施主に分かりやすい見積りとなる。






工事費関係の単位表現としては、「一式」表示が一般的だ。

一式工事とは、材料と工費を含んだ複合価格である。

この表現を多用すると施工範囲や価格構成比が不明瞭となり、施主の不安感を募らせる。

その工事の施工数量が少ないために、資材費と工賃を分離して見積もると割高になる場合などに限定して使用する。

その際には、備考欄などに施工範囲と数量を補足情報として併記する。





(3)経費の表現の仕方

一般的には、一般管理費と現場経費が「諸経費」とされ、共通仮設費を含めたものが「共通費」(間接費)として計上される。

一般管理費や現場経費については経理勘定科目に代表される販売管理費が中心となるため、その表現については各社の独自なものとなる。


しかし、共通仮設費については、工事用の電気水道料金や現場清掃、資材運搬費用などが計上されるため、それぞれの内容を見積り内訳に明記する必要がある。

(4)注記・備考などの文言

リフォーム用の見積り書式としては、最終的にその内訳明細書が工事契約書としても転用できるレベルが望まれる。

したがって、資材の形状寸法や荷姿、メーカー名と品番などの表示、一式で記載された工事費についての施工範囲と数量の明記、ガス・電話・電力工事などに見られる「お客様ご負担工事」、工事用の動力用光熱費などの「施主支給」項目などを注記・備考欄で表記する。


(5)追加・変更の記述

代表 小林稔

見積段階で確定していない工事内容や施工範囲については、非表示とせず、むしろ必要になる場合を想定し、予定施工数量や予定施工範囲を明確に表示したうえで、単価記入欄に「別途工事」あるいは「保留事項」といった記述をする。

これによって本工事契約後に発生する追加工事の対応が迅速に行える。

また、契約時点で決まっていた仕様や施工範囲を変更する場合には、変更項目を明確にするために、あえて変更前に計上した項目は削除せず、数量や単価をマイナス訂正したうえで変更された項目を新たに表示することで要素が見えやすくなる。

この記述方法で集約すると、「増減金額」を表示することができる。

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